「値上げには追従しない」と言っていたソフトバンクが、結局値上げした本当の理由は?

2026年4月10日、ソフトバンクはついに「既存プランを7月から最大月額550円値上げする」と発表しました。

「あれ?ソフトバンクって値上げしないって言ってなかったっけ?」

その通りです。しかもそれを言ったのは、ほかならぬソフトバンク自身でした。


宮川社長「発言の変遷」を全部追いかけてみる

今回のソフトバンクの値上げを語る上で外せないのが、代表取締役社長・宮川潤一氏の発言の変遷です。時系列で並べると、非常に興味深い「翻意の軌跡」が見えてきます。

▼2025年5月(ドコモ・auが値上げ直後)
ドコモが新プランで事実上の値上げを行い、KDDIも既存プランの一律値上げを発表した直後の決算会見で、宮川社長は「我々もそろそろ」と追従姿勢を示しつつも、「時期や方法についてはもう少しじっくりと時間をかけて戦略を練る」と明言を避けました。

▼2025年5月(KDDIへの批判発言)
特筆すべきは同時期、auが導入した「優先接続(ネットワーク品質の優先パス)」を付けた形での値上げに対して、宮川社長が**「優先接続ができると言いながら、他のお客さんが犠牲になるようなものをつけた形での値上げは、お互いにWinじゃないんじゃないか」**とKDDIを名指しで批判していたことです。 値上げのやり方に「お客様目線」を求めるポーズを取っていた形です。

▼2025年8月(第1四半期決算)
値上げしたい気持ちはすごくある」と本音を初めてあけすけに吐露。しかし楽天モバイルへ顧客が流出する「漁夫の利」を警戒し、「お客さまにご納得いただけるような適正価格になるよう慎重に検討したい」と言葉を濁しました。

▼2025年11月(第2四半期決算)
慎重姿勢から一歩踏み込み、「ソフトバンクはどこかで値上げに踏み切る」と中長期的な値上げを初めて明言。「われわれもどこかで動かざるを得ないだろう」と、もはや方向性が完全に決まっていたことを示しました。

▼2026年4月10日(新料金発表)
そして約1年間の「準備期間」を経て、ついに公式発表。既存プランへの一律値上げという、2025年5月にKDDIを批判していたのと全く同じ手法を自ら採用しました。


なぜ1年もかけて「しぶしぶ値上げ」したのか?

宮川社長がこれほど値上げに慎重だった理由は、明確に**「楽天モバイルへの顧客流出」への恐怖**でした。

ドコモやauが先行して値上げした際、価格に敏感なユーザーの一部は楽天モバイルに流れました。「最後まで値上げしなければ、他社から乗り換えてくるユーザーを獲得できる」という計算があったわけです。

しかし、その楽天モバイル自身も2024年時点から「我々は値上げしない」と繰り返しており、ソフトバンクの宮川社長は2025年秋の会見でこれを**「アンフェアだ」と公開批判**するほど、ライバルの値上げ拒否に苛立ちを見せていました。

では、なぜ結局「動いた」のか。理由はシンプルで、KDDIが2025年5月に既存プランの一律値上げを実施した後、大きな顧客離れが起きなかったからです。 携帯会社を乗り換えるには「ナンバーポータビリティ(MNP)の手続き」という面倒があり、日本人の多くは多少の値上げなら許容して同じキャリアを使い続けることが、KDDIの結果から証明されてしまいました。


公式の説明「電気代と部材費の高騰」は本当か?

今回の発表会でソフトバンク専務の寺尾洋幸氏が説明した値上げの公式理由は以下の通りです。

  • 過去5年でトラフィック(データ通信量)が1.6倍に増大
  • 電気代・部材費・人件費などの原価が高騰
  • 次世代通信(6G等)への設備更改の時期と重なった
  • このままではネットワーク品質を維持できなくなる

これらは全て事実であり、嘘ではありません。電力代の高騰や基地局維持コストの増加は業界全体の課題であり、日経新聞も「安値競争が限界に達した」と報じています。

ただ、辛辣な見方をすれば、「コスト増」はドコモやauが値上げを行った2025年時点でも同じ条件だったはずです。それでも1年間値上げしなかったのは「コストに限界が来たから」ではなく、「他社の値上げで顧客離れが起きないと確認できたから」という側面が大きかったことは否定できません。


「KDDIを批判した手法を、自ら採用」という皮肉

今回最も注目されたのが、宮川社長が2025年5月にKDDIの「優先接続付き値上げ」を批判しておきながら、2026年の新プランでソフトバンク自身も全く同じ「衛星通信(スターリンク連携)・高速接続オプション」を付けた形での値上げを採用した点です。

東洋経済は「1年前に批判した手法を、自ら採用した」と端的に評しました。
もっとも、ソフトバンク側の言い分としては「スターリンクによる衛星通信サービスの品質は本物であり、顧客にとって真にメリットのある付加価値がある」という姿勢ですが、批判の的になっているのは事実です。


結局、消費者が学ぶべき教訓は何か

ソフトバンクの一件から見えてくる教訓はシンプルです。

「〇〇はしない」という大企業の公式発言を、額面通りに受け取ってはいけない。

携帯会社のビジネスは、最終的に「競合他社が値上げして顧客離れが起きなければ、自社も値上げする」という構造で動いています。 今回のドミノ式値上げは、大手3社が揃い踏みで「もう値下げ競争の時代は終わった」と市場に宣言した転換点とも言えます。

一方で楽天モバイルは今も「値上げしない」という姿勢を維持しています。
しかしそのソフトバンクも「1年間は値上げしなかった」のです。楽天モバイルの「値上げしない」発言が今後どれだけ持続するかは、楽天グループ全体の財務状況と、大手3社の動向を注視し続ける必要があるでしょう。

「安いから乗り換えた」ではなく、「自分の使い方と電波環境に合っているから使う」という軸で選ぶことが、長期的に後悔しないスマホ選びの鉄則です。

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