総務省が進める「携帯電話料金値下げ」何が問題なのか。

 私みたいな素人が専門家の研究や国の政策に口出しする知識も権限もありません。以下のような考えはとっくに専門家の方々の中で議論されるものだと思いますが、ご了承ください。

 2020年後半に総理大臣が変わってから、新政権の目玉政策の一つとして「携帯電話料金の値下げ」が挙げられました。10月には「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」が示され、様々な点での変化が予想されます。

 あくまでも私企業である携帯電話通信会社(キャリア)の設定する料金の値下げを求めるという、普通に考えると理解しにくい政策です。しかし、政府が値下げをキャリアに求める根拠がないわけではありません。なお、携帯電話料金値下げに向けた動きは2018年前後から動き始めており、端末代の一括ゼロ円や実質ゼロ円などという大幅値引きの禁止、SIMロック解除のルール、契約解除料のルール作りなどを行っています。

今までの動きの結果

 ただし、契約解除料などの値下げが行われても直接的な通信料金の値下げにはなりませんでした。2019年の大手3大キャリアユーザーがスマートフォンにかける料金は平均「8,451円」と2014年の「6,514円」と比較して増加傾向にあります。(下記リンク参照)

 また、2019年10月には電気通信事業法が改正され、携帯端末の本体代金の値引き額を2万円までに制限、2年縛りの違約金が1000円までとなりました。これにより、キャリア間の移動や格安SIMへの移動促進、販売携帯端末の多様化が期待されました。ただし、このように料金の仕組みが変わったこと知っている人は多くはないでしょう。上記のリンクにあるように、法改正による分離プランを(やや)理解している人は約40%にとどまります。

このような状況を受けて、2020年10月、総務省が「アクション・プラン」を策定するに至ったわけです。

アクション・プランの内容

簡単に言うと以下の三本の柱からなります。

  1. 分かりやすく、納得感のある料金・サービスの実現
  2. 事業者間の公正な競争の促進
  3. 事業者間の乗換えの円滑化

さらに、この中で具体的に指摘しているものが、

  • 廉価な中・低用量プランがサブブランドで提供され、メインブランドでは値下げの恩恵がない
  • 大容量プランでは8,000円前後のプラン以外あまり提供されておらず、高い水準にある
  • 端末代通信代とは別に発生することがある「頭金」という用語の制度の問題
  • ショップ(代理店)ごとに端末価格が異なる問題
  • 押し売り、抱き合わせ販売などの問題
  • eSIMの促進

などとなっています。

政府による圧力の根拠

これらのように政府による圧力をかけた根拠としては、

  • 「携帯電話キャリアによる寡占市場状態の是正」
  • 「寡占状態の解消による健全な価格競争の促進」
  • 各キャリアは公共の電波を利用しており、国民にとっても必需的なものになっている

というのが大きいと思われます。実際、3大キャリアは通信プランにおいてほとんど同じような料金設定を行っており、値下げにつながる動きはなかなか見られませんでした。さらに、「実質ゼロ円」などという端末代金分を毎月通信代金から割り引くなどといった利用者にとっては分かりにくく、複雑なサービスを行っており、契約解除料も高額なものでした。この状況を解消するためにこれまで政府が動いたてきたわけです。

アクション・プランを受けての動き

この結果として、AUとsoftBankの各サブブランドであるUQモバイルとワイモバイルから廉価な大容量プランが提供されることが発表されました。

  • スマホプランV(UQモバイル)
    月額:3980円
    容量:20GB
  • シンプル20(ワイモバイル)
    月額:4480円
    容量:20GB

元々8,000円前後という大容量プランの低価格化、菅官房長官(当時)が発言した「料金を4割下げる余地がある」という主張を満たす形にもなっており、歓迎の声がある一方で、「ただプランが増えただけ」「メインブランドが値下げしなければ意味がない」という声も上がっています。

さらに、これら一連の値下げに対して総務大臣が11月27日の記者会見において、以下のように指摘しています。

(AUからUQに乗り換えるときの場合)

低廉なプランを作ったことは評価したいと思う。

しかし、メインブランドからサブブランドのプランに移る時には、複雑な手続きと15,500円という手数料を取る。これでは低廉化に向けた動きに対して、利用者は乗ってこないと思う。逆に、サブブランドからメインブランドに移る時、安い方から高い方へ移るところの手数料は0円となっている。

他社に移るのではなくて、自分の会社の中の、同じ事業者の中の別のプランに移るために、なんでこれだけ多くの手続と手数料を取るんだと。これは、私は今、消費者庁とともに連携して、自由な選択を阻害する制度についてはしっかりとした指導をしてまいりたい。

さらに、サブからメインにいった時は、月額割引で35,000円という特典も付く。これは低いブランドに移行する推進運動ではなくて、高いブランドにむしろ移す。高いブランドに囲い込みをするスキームを堅持しているのが今の現状だ。

これではユーザーにとって値下げの実感がわかない。

引用元:『武田総務大臣の「値下げで誠意を見せて」発言にKDDIがコメント』より要約
(URL:https://japanese.engadget.com/kddi-112623428.html)

このように、総務大臣はサブブランドがらメインブランドへの移行は手数料タダやその他の割引などの優遇策をとっているのにも関わらず、逆にメインブランドからサブブランドへ移行するときは高額な手数料をとっている現状に疑問を呈しています。

これは、現状の新プランでは解約手数料1,000円が上限ですが、それ以前のプランではその上限がないことから9,000円以上の違約金が発生します。これらとその他事務手数料(転出手数料3,000円+転入手数料3,000円)などを合計した額のことを指しているのだろうと思います。

また、UQモバイルからauへの移行割引は以下のリンク先のものを指すと思われます。

この問題の最大の課題は何か

これまで様々な問題点への指摘が上がってきましたが、私が問題だと思っているものは、以下の三点になります。

  1. 長期にわたる端末の分割払い
  2. 端末代の支払いとの紐づけ
  3. 利用者によるプラン見直しの動きが少ない

端末代とのセット販売が移行を妨げる

端末代金の割引上限が20,000円に制限されて以降、各キャリアは48回、36回分割払いなどという新しい支払い方法を提示しました。月額の支払い額を、見かけ上安く見せ、キャリアに長くとどまらせる手です。また、「とくするサポート+」や「スマホおかえしプログラム」などといった、48回払いの24か月目に端末を返却して新しい機種を買うと残りの24か月分は払わなくても良いという、とてつもないオプションも行っています。

48回払いということは、一般的に次に携帯電話ショップに行くときはスマートフォンを買い替えるときです。4年間はキャリアにとってユーザーが乗り換えることは基本的になくなるということです。このような状態が常態化している今では、なかなかユーザーによる乗り換えが促進されないと思います。

結論を言うと、携帯電話本体の販売と通信会社の契約は完全に分離するべきだと思います。

利用者側も安くしようとする努力を怠っているのでは

私個人の考えとしては、「利用者が適切なデータ容量のプラン選びをしていない」から適正な競争までに至らないのではないかと思います。いくら国が圧力をかけてキャリアに新プランを出させても、結局のところ最終的にプランを選択するのはユーザーです。

そのユーザーが新プランやどのプランがどのように違ってどのくらい安いのかを理解できていないと自分に合ったプラン選びをすることは難しいです。そもそも三大キャリアユーザーの15%以上の人が、今の自分がどのくらいの容量のプランに契約しているか分からないという調査結果もあります。ブランド力にこだわりたいという人もいますので必ずしもそうとは限らないですが、容量プランや料金について調べ、理解しているような人はとっくにMVNOや楽天モバイルなどといった廉価なプランに移行していると思います。

画像引用元:MMD研究所

さらに、官房長官が国民に対し、「携帯電話料金値下げを見直すべき」と呼びかけています。この根拠として、加入するプランのデータ通信量を使い切っていない人もおり、実際の使用量にミスマッチがあることを指摘しています。

実際に、現状でも価格の安いプランが提示されているのにも関わらず、現状のプランのままで「携帯電話代金が高い」と言っている人を見ることがあります。この人に対して「乗り換えとかプランの変更とかはしないのか」と聞いたところ、「面倒くさい」という返事がありました。私には携帯電話料金が下がるなら多少面倒でもプランの変更などの検討を行いたいとは思うのですが、多くの人は後回しにしてしまうのでしょうか。

ユーザーが無関心な限り、競争の健全化はない

ただ、このようなプランの見直しを行わない人が「月額料金が高い」「値下げしろ」といった意見は筋違いなのではないでしょうか。現状でも様々な選択肢があります。また、最新のiPhoneやハイスペックなandroidを二年ごとに分割払いで買い替えながら使っているとすれば、出費がかさむのは当たり前だと思います。どうもスマートフォン本体に関して「モノを買う」というイメージが薄くなってしまっているのではないでしょうか。結局、機種代金と通信料をセットで払い続けている限り、ユーザーが「料金が安くなった」と実感するのは難しいのではないでしょうか。

前にも言った通り、結局のところ最終的にプランを選択するのはユーザーです。このユーザーが乗り換えやプラン変更に無関心な限り、いくら魅力的なプランが提供されたとしても乗り換えなどの動きは活発になりません。プラン変更やキャリア変更を行うためのしきいは下がってきています。今一度、「携帯電話料金が高い」と思うのであれば料金プランの再考をしてみてはいかがでしょうか。

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